米国ダギーセンター

 

 

 ダギーセンターは、1982年アメリカ北西部オレゴン州ポートランドに作られました。 家族を亡くした子供たちの心のデイケアセンターとしては、世界中で最も歴史と実績のある施設です。
 ダギーセンターの名前の由来は、脳腫瘍のため13歳で亡くなったダク・トゥルノ君の愛称です。彼は、女性精神科医として世界的な著名なエリザベス・キューブラ・ロス博士に手紙を書きました。
  「命とは何?死とは何?小さな子どもたちが死ななければならないならば、なぜ死について読む本がないの?」と。
ロス博士は、娘の二十八色のフェルトペンでイラストを交えた美しい返事を書きました。

「死とは、蝶が繭から解き放たれるように、肉体を脱ぎ捨て、より大きな愛の世界に帰っていくことです」

 

この手紙は「ダギーへの手紙(ダギー・レター)」と呼ばれ、書籍化されています。
ダギーセンターの創設者であるへベリー・チャペル夫人は、看護婦であり、ロス博士の親友でした。

組織

 

ダギーセンターは非営利で、無宗派の民間団体です。 行政からの補助・助成は受けておらず、市民や企業からの寄付で運営されています。 3~19歳までの230人の子供たちのケアを、25人の理事、7人の常勤職員と、140人のケア担当のボランティア(ファシリテーター)が支えています。

この他、芝刈りやペンキ塗り、広報、募金など、たくさんのボランティアが活発に活動しています。

 

理念と原則

 

ダギーセンターでは、
①一人一人の抱える悲嘆は違う
②悲嘆は自然なことで、病気ではない
③子供たちに安全な場所、安心を与える場所を提供しなければならない
④子供たちを治そう、子供たちに教えようとするのではない。心を痛めているのを許してあげるのだ
 という原則があります。

 


《感情表現を妨げずケアする側の配慮も大切》

ダギーセンターでは、子供たちは10~15人のグループごとにサポートを受けています。 グループでは、ファシリテーターと呼ばれるサポート担当のボランティアが5~6人と、職員1人がサポートに当たります。

グループは、3~5歳、6~12歳、13~18歳という年齢別に分けられ、かつ自殺、殺人、事故、病気など亡くした家族の死因別に分けられています。

それは、年齢によって死に対する認識の違いがあったり、死因によって心の傷に違いがあると考えているからです。
 サポートは、隔週ごとに1回で1時間30分受けます。

子供がサポートを受けている間、親はリビングルームでソフトな音楽に耳を傾けながら、自分自身の悲しみや子育て、家計、仕事などの悩みをはじめ、 彼らの心の中にあるものすべてが話し合いのテーマになります。
 子供たちには、オリエンテーションと呼ばれる「1日体験入学」をして、サポートを受けるかどうか子供自身が決める機会があります。

オリエンテーションでは、15~20人の子供が輪になって、お気に入りにぬいぐるみを抱きしめて座り、まず、ダギーセンターを紹介したテレビ番組のビデオを見て、お互いに自己紹介をします。

 

話をする時は順番を守り、インディアンが使っていたという「トーキング・ストック」を持った人が亡くなった家族の話をします。もちろん話したくなければパスもすることができます。

その後、ほかの部屋を見学したり、実際に遊んだりして、プログラムを体験することができます。 体験入学をした子供のうち、50~60%の子供たちが継続してサポートを受けています。
 

サポートの期間は、子供たちが受けたいと思うだけ受けることができます。 6週間から2~3年いる子供もいます。ダギーセンターを離れるときも、子供たちが自分で決めます。 離れてからもお互いに連絡を取り合って、家族同士で交流をする場合も多いとのことです。


 ダギーセンターでは、子供たちの感情を外に吐き出させるように、あらゆるプログラムを工夫しています。

エネルギーが高い時には「火山の部屋」で、泣いたり、怒ったり、身体を思いきり動かしたりすることができます。話を沢山聞いてもらう「おしゃべりの部屋」、思っていることを描く、筆に絵の具をつけて思い思いに描く「アートの部屋」などもあります。何もしないで静かに過ごしたい時には、一緒にそばにいてあげるだけでも癒しになるでしょう。


 ダギーセンターでは、トラブルを防ぐため8つのルールがあります。

①職員やファシリテーターの「やめなさい」には必ず従うこと
②「火山の部屋」以外では物を投げること禁止
③相手の体や心を傷付けること禁止
④首から上をたたかない
⑤必ず大人と一緒にいること
⑥血液を触らないこと
⑦ダギーセンターで知ったことを他で話さないこと
⑧話したくないときはパスできること

 

 

このルールは、安全な場を共に共有し、過ごすためのルールです。

 

 誰かの命日には、輪の真ん中のローソクをともして、亡くなった人の思い出を語ったり、 形見の品や、写真を持ってくることで亡き人を思い出に寄り添う時間も設けたりしています。


 ファシリテーターはサポートの前、職員と1時間のミーティングをします。 そこで、ファシリテーター自身のその日の出来事を話し合います。 これは、ファシリテーター自身のストレスを子供たちにぶつけないためのものです。 また、サポートの後、1時間のミーティングでその日のプログラム内容を話し合い、経験を話し合います。これは子供たちの感情を分け持つことで、ファシリテーター自身が疲労することもあるため、ファシリテーター同士が互いをケアし合うのです。


ファシリテーターは、死別の経験が無くても、養成講座やトレーニングを受ければ、誰でもできます。 そして、ファシリテーターのトレーニングでは、自分自身の喪失による悲しかった体験と、その時の感情を思い出す作業が不可欠です。 愛する人との死別だけでなく、失恋など、その人の人生における類似の経験と感情が、 悲しみにくれている子供たちの感情を受け入れ、分け持つことを助けます。
 しかし、死別体験者がファシリテーターになる場合に注意すべきことは、 子供をサポートしているときに共感して涙を流すことは構わないですが、泣き崩れてはならないのです。 自分の心の癒しをせずに、子供にだけそれを求めてはならないからです。

自分のこころの痛みを自覚し、癒すこと。そこができて初めて、他者のサポートができるのです。

 

 

The Dougy Center

 https://www.dougy.org/